相模川から発見された鎌倉時代の鐙(あぶみ) 春期特別展で公開

平成24年2月28日

平塚市博物館
担当 学芸担当 栗山
電話 0463-33-5111
 

相模川から発見された鎌倉時代の鐙(あぶみ)
春期特別展で公開


 平成16年(2004)に平塚市博物館に寄贈された「鉄製舌長鐙(てつせいしたながあぶみ)」1点(左側)が、鎌倉時代の希少な資料であることが確認されました。
 資料は昭和15年頃、相模川に架かる馬入鉄橋の下流付近で砂利採取船が砂利採取作業中に発見され、近隣の住民が保管していましたが、平成16年に博物館に寄贈され、調査を進めていました。
 鎌倉時代の同種の鐙には、東京都青梅市の御嶽神社奉納品一双(国宝)と東京国立博物館所蔵品二双があり、両資料とも鎌倉時代のものと位置付けられています。本資料は大きさ、形状ともにこれらと近似している点から、鎌倉時代のものと判断できます。
 鉄製舌長鐙について鎌倉時代の遺例は多くありません。類例の少ない理由としては、鐙が極めて実用的な道具であり消耗が激しいこと、更に消耗した場合でも鉄材として再利用されたことなどが考えられます。また、その後の時代の資料でも神社への奉納品として、あるいは武家の宝物として伝世されたものがほとんどであり、実際に使用されたもので、なおかつ「出土」という形で使用場所との関係が捉えられるケースは珍しく、その点でも地域の歴史資料として高く評価できます。
 本資料は3月17日(土)から5月6日(日)までの開催を予定している春期特別展「平塚と相模の城館」の会場で一般公開します。
 春期特別展「平塚と相模の城館」は、「城」をキーワードに平塚の中世(鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代)の歴史と資料を紹介する展覧会で、鐙のほかに市内で出土した中世の考古資料や城館址の情報・写真を展示します。
 

問い合わせ先 平塚市博物館 学芸担当 0463-33-5111
 
 

内容の補足  

 この種の鐙は「武蔵鐙」と言い、鞍の居木から下げられた力革との連結に鉸具を使用するもので、武蔵国での生産が多かったためにこの名で呼ばれています。平安時代に成立した形態で、馬上での運動性や安定性を重視した武家を中心に踏込部を長くしたものが「舌長鐙」です。
 本資料は鉄製の舌長鐙で、残存高は250mm、鳩胸先から舌の先端までの長さ344mm、幅は鳩胸位置の最大値で105mm、舌の先端で80mmを測ります。刺金下には花弁形の鉄製紋金物を施しています。鉸具頭(かこがしら バックル)の上部はちぎられたように欠失していますが、実際の使用に伴う破損と摩耗と考えられます。
 資料が発見された馬入地区は鎌倉時代以降、相模国沿岸部における交通の要衝となっています。つまり東の鎌倉と西の都を結ぶ、中世における国内随一の陸上幹線上のポイントとして、実用的な馬具との縁も深いと言えます。
 

 

資料確認の経過 

昭和15年(1940年)頃  馬入川の鉄橋下流付近で砂利採取船による砂利採取中に発見。近隣の住民宅で保管。


平成16年(2004年)8月26日  保管者より博物館に資料が寄贈される。


平成23年(2011年)3月~  資料の本格調査を開始
「馬の博物館」に当該資料を持参して馬具研究の第一人者である同館理事の末崎真澄氏に鑑定していただき、鎌倉時代の「武蔵鐙」であるとの所見を得る。
末崎真澄氏の紹介により氏の同行のもと、東京国立博物館上席研究員の池田宏氏に資料を実見していただき、東京国立博物館所蔵資料と比較検討の結果、鎌倉時代の「武蔵鐙」であるとの所見を得る。


平成24年(2012)3月
刊行予定平塚市博物館研究紀要「自然と文化 35号」で資料の詳細を掲載予定。

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