精神障がいについて 精神障がいとは、精神疾患のために日常生活や社会生活がしづらくなることを言います。原因は、病気になりやすいかどうかという「もろさ」や、「ストレス」などの相互作用によるものと考えられています。精神疾患は誰でもかかりうる病気ですが、適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば症状をコントロールできるため、大半の方は地域で安定した生活を送ることができます。 統合失調症 幻覚、妄想、思考障がい、感情や意欲の障がいなど、多様な精神症状を特徴とします。現実を認識する能力が妨げられ、判断ができにくく、対人関係が難しくなるなど、さまざまな生活障がい(生活がしづらくなる障がい)を引き起こします。 主な症状・特性 ●物事に柔軟に対応することが苦手 ●常に緊張し、くつろぐことが苦手 ●意欲がない、疲労倦怠感が強い  ●集中力や忍耐力の低下、服薬による副作用などで、生活のしづらさを抱えている ●現実と空想世界の区別があいまいで、自分にできることの判断や目標の立て方が現実的でない ○最近では、新しい薬や治療法の開発が進んだことにより、長期的な回復を期待できるようになっています。早く治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、周囲が様子に気づいたときは早めに専門機関に相談してみましょう。 うつ病 精神的・身体的ストレスが重なるなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく働かないため、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという悪循環が起きてきます。 主な症状としては、「眠れない」、「食欲がない」、「一日中気分が落ち込んでいる」「何をしても楽しめない」などがあります。 ○薬による治療とあわせて、認知行動療法もうつ病に効果が高いことがわかってきています。専門機関への早めの相談と、ゆっくり休養をとることが大切です。 双極性障がい(躁うつ病) ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態を繰り返します。躁状態とうつ状態という、両極端な状態を行ったり来たりするのが特徴です。うつ病だと思いながらも、極端に調子がよくなって活発になる時期がある場合は、双極性障害(躁うつ病)かもしれません。 【躁状態】 ●睡眠時間が短かったり、寝なくても元気で活動を続けられる   ●人の意見に耳を貸さない ●話し続ける ●次々にアイデアが浮かぶ ●初対面の人にやたらと声をかける 【うつ状態】 ●憂うつ、気分が重い ●何をしても楽しくない ●疲れているのに眠れない ●何かにせきたてられているようで落ち着かない ●悪いことをしたように感じて自分を責める ●自分には価値がないと感じる 躁状態とうつ状態を繰り返す ○躁状態ではとても気分がよいので、本人には病気の自覚が不十分な場合が多くあります。そのため、うつ状態では病院に行くのですが、躁状態のときには治療を受けないことがよくあります。しかし、うつ病だけの治療では双極性障がいを悪化させてしまうことがあります。本人だけでなく、周囲の人も、日頃の様子や気分の波を見守り、躁状態に気づくことが大切です。 パーソナリティ障がい パーソナリティ障がいは、大多数の人とは違う行動や反応をすることで、人とのコミュニケーションがうまくいかずに本人が苦しんだり、周囲の人が困っている場合に診断される疾患です。 認知(ものの捉え方や考え方)や感情、衝動のコントロール、対人関係といったパーソナリティ機能の偏りから問題が生じ、社会生活そのものが困難になることもあります。いわゆる「性格が悪いこと」とは異なり、適切な治療によって徐々に改善するものと考えられています。 パーソナリティ障がいには、主に次の3つの特徴があります。 ●考え方に極端な偏りがある 「多くの人がこう考えるだろう」というような枠から外れて、ものの考え方が 偏っていたり、思考に柔軟性がなく、他者の意見を受け入れられません。 ●対応がかたくなである 場面や相手によって臨機応変に対応することがなく、いつでも、どこでも極端に偏った対応を続けます。こうした偏りが、ある特定の分野だけでなく、対人関係や社会生活全般にわたります。 ●特定の原因がない はっきりとした原因がなく、おおむね思春期~青年期(18歳以上)ごろからこうした傾向が見られ、その後も継続します。 ○パーソナリティ障がいの方への対応の基本は次のとおりです。 ・言いなりにならない あらかじめルールを決めて、できないことは断固とした姿勢で拒絶します。 ・欲求のままにさせない 自分のことは自分でしてもらい、その結果も自分で受け止めるよう促します。 ・「だいじょうぶ感」を与える 不安そうな時は、「だいじょうぶ」だと言葉や態度で伝え、行動が改善したら、本人と一緒にそのことを確認することで、本人のなかの「だいじょうぶ感」をアップさせます。 ○パーソナリティ障がいの治療の中心は精神療法です。対話を通じて少しずつパーソナリティの偏りをほぐしていきます。治療には時間がかかりますので、家族のサポートが大事になります。「だいじょうぶ」「見捨てないよ」と伝えることが治療の大きな助けとなります。 精神障がいを正しく理解しましょう 精神障がいに対する偏見や誤解は、残念ながらいまだに社会一般に残っています。周りの人の理解を得られなかったり避けられたりすることで、本人はますます不安と孤立感を深めてしまいます。精神障がいの方も、適切な治療やリハビリテーション、必要な支援を得ることで、地域で安定した生活を送ることができるようになります。個人の価値観や考えを尊重し、精神障がいを正しく理解することが大切です。