エコミュージアムの考え方

 エコミュージアムとは生態学(Ecology)と博物館(Museum)を組み合わせた造語で、「ある一定の文化圏を構成する地域の人びとの生活と、その自然、文化および社会環境の発展過程を史的に研究し、それらの遺産を現地において保存、育成、展示することによって、当該地域社会の発展に寄与することを目的とする野外博物館」と定義されています。

 エコミュージアムは
  1. コア    情報センター・調査研究センターとして機能する中核施設
  2. サテライト 保全し、展示するべき地域の自然・歴史・文化などの遺産や現状、つまり資源
  3. トレイル   コアとサテライトを巡りながら地域を体感し、新たな発見を生み出す道

 の 3つの要素を持ち、過去から現在に至る地域社会の様相を総合的に理解させる構想です。一般的な博物館は建物の中に資料を展示しますが、エコミュージアムは地域全体が展示室なのです。

 1960年代後半のフランスで生まれたこの考え方は、1970年代後半に日本でも紹介されました。しかし、ヨーロッパのエコミュージアムと違い、日本ではエコミュージアムの持つ「まちづくり」の効果が重視されています。それは、生活の舞台である地域と個々の住民の生活とが絶縁した状態が一般化している現代において、「地域を知る」というエコ・ミュージアムの根源的な要素が住民の地域への愛着を醸成し、住民の地域社会への積極的な参加を促すことにつながるからなのです。

金目まるごと博物館の基本的な考え方

 「金目まるごと博物館」はエコミュージアムの考え方をベースにして、地域に残された自然環境や歴史的遺産を活かしながら、未来に持続していく「まち」を形成していく構想です。

 日本の高度経済成長は世界的にもめざましいものがありますが、反面、永く受け継がれてきた住環境を、機能と経済性という視点だけで作り変えてしまいました。特に膨大な労働力を必要とする大都市とその周辺では彼らの居住地を確保するための大規模な開発が続けられました。そのために地域の特性はほとんど失われてしまい、そこに移り住んだ人々に とって、自分が暮らしていく地域としての魅力は何も残っていなかったのです。そこは既に「まち」でも「地域」でもない、単に家を建てて寝起きする「場所」でしかないのです。

 住民が自分の住む環境、つまり自分の生活を取り巻く社会的環境、自然環境、歴史的環境を軽視すればするほど住民は「まち」から隔離され、「まちづくり」以前に 、つくるべき「まち」自体がその実態を無くしてしまいます。単なる「家屋の集まり」に過ぎない形ばかりの「まち」には次世代に受け継ぐべきものは何もありません。建物や 都市基盤の老朽化は「まち」の老朽化と同義となり、以後は破壊と再建を繰り返す未来があるだけなのです。

 住民ひとりひとりが、自分を取り巻く様々な環境のなかで暮らしていることを自覚すること、その環境を愛し、そこに暮らしていることに誇りと自信が持てること、そしてその環境を次の世代にも伝えていくこと。これらのことは、持続し継承できる「まちづくり」には欠かせません。それを推進していくための原動力として、また行動の指針として、あるいは様々な動きに統一性を与えるシンボルとして機能するのがエコミュージアム「金目まるごと博物館」なのです。ですから、予め決められたルールは存在しません。“金目のために良いこと”はすべてエコミュージアムの構成要素に採り入れることができるのです。

 豊かな自然環境や歴史的遺産、文化的景観を人工的に作り出すことはできません。既にすべてを作り変えてしまった地域にエコミュージアム構想は不可能です。しかし金目地区には先人が大切にしてきた自然や培ってきた歴史や文化が、今なお脈々と息づいています。新しいものばかりがもてはやされる現在、エコミュージアムが実践できる場所として、金目地区が最適地であると考えられます。それだけでもすばらしいことなのかもしれません。

 もちろん、エコミュージアムの主役はそこに住む人々と日々の暮らしです。エコミュージアムの推進者であり学芸員であり最大の来館者、それはそこに住む住民自身なのです。

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