作家・中勘助(1885-1965)の平塚居住100 年を記念して、平塚での作家活動の一端と作品へのこだわりを紹介。代表作「銀の匙」と、平塚での暮らしを綴った「しづかな流」の関連資料とともに、作家の言葉を通して、日常の中に広がる〈小宇宙〉ともいうべき世界をご案内します。​
なかかんすけしょうぞうしゃしん よんじゅうだい しょうわしょき いわなみしょてんぞう 中勘助肖像写真(40代)、昭和初期頃、岩波書店蔵 ※複写禁止

概要

中勘助 平塚居住100 年記念
中勘助の小宇宙(ミクロコスモス)―「銀の匙」と「しづかな流」

  • 会期    2024年10月5日(土曜日)~2024年11月10日(日曜日)
  • 休館日   月曜日(ただし10月14日、11月4日は開館)、10 月15日(火曜日)、11月5日(火曜日)
  • 開館時間  9時30分-17時0分
  • 主催    平塚市美術館
  • 会場    平塚市美術館 テーマホール・エントランスホール
  • 観覧料   無料
 
担当:鈴木美有(当館学芸員)、勝山滋(当館館長代理)

詳細

令和6(2024)年は、作家・中勘()()(1885-1965)が平塚に居住して100年となります。この節目となる年にあたり、「中勘助 平塚居住100年記念 中勘助の小宇宙()―「()()」と「しづかな()」」と題し、ロビー展を開催します。
中勘助は、明治18(1885)年東京神田に生まれ、第一高等学校を卒業後、東京帝国大学英文科に入学(のちに国文学科へ転じ卒業)。両校で、夏目漱石(1867-1916)の教えを受けました。作家デビュー作となった「銀の匙」は、病弱だった幼いころの思い出や身近な人々との交流を描いた自伝風の小説で、漱石の強い推薦によって東京朝日新聞に連載され、勘助の代表作となりました。
 その後も、執筆を続けながら旅行や知人宅への仮寓など約10年の単身生活を経て、大正13(1924)年に平塚町西海岸()(現・平塚市()城ヶ丘))に家を建て、約8年間暮らしました。当時の平塚での生活を綴った日記体の作品「しづかな流」では、勘助の日々の暮らしと平塚の豊かな自然が捉えられています。
本展では、「銀の匙」と「しづかな流」の関連資料を、作家の言葉とともにご紹介します。中勘助という作家の繊細な感受性が捉えた、日常のひとこまひとこまによって紡がれる〈小宇宙(〉ともいうべき世界をご覧ください。
 

展覧会のみどころ

1.中勘助直筆の書簡を展示

中勘助は大正15年の『銀の匙』単行本刊行にあたり、神田神保町の岩波書店と頻繁に書簡のやりとりをしました。それらの書簡からは、自身の作品に対する作家の「こだわり」と、執筆活動の様子がうかがえます。今回は、中勘助が平塚から差し出した、岩波茂雄ならびに岩波書店出版部宛の書簡を展示します。

2.古今の『銀の匙』を楽しむ

中勘助のデビュー作にして代表作『銀の匙』は、大正2年と大正4年の朝日新聞連載後、岩波書店より大正10年に仮綴じ本、大正15 年に上製本が刊行されました。大正15年版は、装幀デザインも中勘助が務め、絵柄は兄嫁・中末子が描きました。本展では、大正10年版・15年版の展示に加え、昭和62年刊行の上製本復刻版をお手に取ってご覧いただきます。単行本刊行の歴史を感じつつ、『銀の匙』の世界を覗いてみてください。

3.平塚時代を綴った「しづかな流」の世界

中勘助は平塚での暮らしを「しづかな流」という日記体の作品に綴りました。そこには、平塚の豊かな自然への愛情と日常の中にある幸せや感動を、繊細な文章で紡いでいます。今回は「しづかな流」に綴られた言葉とともに、中勘助が暮らした昭和初期の平塚の風景写真を展示し、作家の目を通して見える世界を感じていただければと思います。
 

関連事業

  • 当館学芸員によるギャラリートーク
日時:10月12日(土曜日)、11月3日(日曜日)各14時0分~14時20分
場所:1階ロビー(エントランスホール、テーマホール)
※申込不要、無料
 
  • 中勘助 平塚居住100年記念 記念講演会&コンサート
日時:11月9日(土曜日)13時30分 ~ 15時30分(開場13時0分)
場所:ミュージアムホール(定員150名)
主催:中勘助を知る会
共催:平塚市美術館
※事前申込制、先着順
※詳細は中勘助を知る会のウェブをご覧いただくか、お電話(0463-55-6825)でお問い合せください。

出品作品

なかかんすけ ぎんのさじ いわなみしょてん たいしょうじゅうごねんかんこう こじんぞう 中勘助『銀の匙』岩波書店、大正15年刊行(個人蔵)
そうしゅうひらつかまちかいがん だいいちどうろよりうみをのぞむ えはがき しょうわしょきごろ ひらつかしはくぶつかんぞう 相州平塚町海岸第一道路より海を望む(絵葉書)、昭和初期頃、平塚市博物館蔵
そうしゅうひらつかめいしょ はなみずがわのふうこう えはがき しょうわしょきごろ ひらつかしはくぶつかんぞう 相州平塚名所 花水川ノ風光(絵葉書)、昭和初期頃、平塚市博物館蔵
そうしゅうひらつかまちかいがん しんどういどのこうけい えはがき しょうわしょきごろ ひらつかしはくぶつかんぞう 相州平塚町海岸新道井戸の光景(絵葉書)、昭和初期頃、平塚市博物館蔵