輸出陶磁器の全盛期である明治時代前半に海外へ輸出された日本各地の陶磁器の里帰り品を皮切りに、明治30年代以降のアール・ヌーヴォー、アール・デコに代表される新しい意匠やデザインを取り入れた作品を、横山美術館の名品約140点によりご紹介します。
 
宮川香山 高浮彫河骨亀翡翠花瓶 宮川香山《高浮彫河骨亀翡翠花瓶》明治時代前期、横山美術館蔵

概要

横山美術館名品展 明治・大正の輸出陶磁器-技巧から意匠へ

  • 主催・会場 平塚市美術館
  • 特別協力  公益財団法人 横山美術館
  • 協賛    神奈川中央交通株式会社
  • 会期    2023年10月7日(土曜日)~11月26日(日曜日)
  • 休館日   月曜日(ただし10月9日は開館)、10月10日(火曜日)
  • 開館時間  9時30分-17時0分(入場は16時30分まで)
  • 観覧料   一般 900円(720円)、高大生 500円(400円)
※( )内は団体料金
※中学生以下、毎週土曜日の高校生は無料
※各種障がい者手帳の交付をうけた方と付添1名は無料
※65歳以上で平塚市民の方は無料、市外在住の方は団体料金

担当:家田奈穂(当館学芸員)

詳細

   このたび、平塚市美術館では「横山美術館名品展 明治・大正の輸出陶磁器 技巧から意匠へ」を開催いたします。
   明治時代には、政府が推進する殖産興業、輸出振興政策により、日本の陶磁器が欧米を中心に積極的に輸出されるようになりました。その背景には、日本の陶磁器が19世紀後半から欧米でたびたび開催された万国博覧会において高い評価を得ていたことが挙げられます。
 欧米の人々の好みにあうよう制作された東洋的なモチーフと精緻な技巧を備えた絢爛豪華な陶磁器は、ジャポニスムの気運を高めるとともに欧米のやきものと相互に影響しあいながら、後のアール・ヌーヴォー、アール・デコへと展開する端緒となりました。
 神奈川県内でも、1859(安政6)年の横浜開港により、従来、窯がなかった横浜で陶器生産がはじまり、京都から移り住んだ宮川香山(みやがわこうざん、1842-1916)が眞葛焼(まくずやき)を試みて好評を博しました。香山の技巧を凝らした陶器からは、全力を尽くして世界に挑戦していた明治の陶工の気概が見て取れます。ほかにも素地を産地から取り寄せて横浜で上絵付を施す工場が多数でき、輸出港ならではの賑わいをみせました。
   本展は、輸出陶磁器の全盛期である明治時代前半に海外へ輸出された日本各地の陶磁器の里帰り品を皮切りに、明治30年代以降のアール・ヌーヴォー、アール・デコに代表される新しい意匠やデザインを取り入れた作品を、横山美術館の名品約140点によりご紹介するものです。

展覧会のみどころ

1.超絶技巧の輸出陶器

 水辺の岩場に潜む亀(図1)、薔薇の茎にとまる鳩(図2)。胴部分に施された丸彫りに近い亀や岩、鳩や薔薇といった大胆な彫刻的意匠と上絵付による絵画的意匠があいまったそのデザインの奇抜さは鑑賞者を驚かせます。初代宮川香山による技巧の粋を尽くしたこれらの作品群は、真葛焼と呼ばれ、横浜港から欧米に向けて輸出されて高い評価を得ました。
 

(図1)宮川香山 高浮彫河骨亀翡翠花瓶 30.2×23.2cm、明治時代前期(19世紀後半)


(図2)宮川香山 高浮彫薔薇鳩花瓶 各24.5×22.8cm、明治時代前期~中期(19世紀後半)
 

2.貴重な里帰り品の数々

 明治、大正時代に日本で制作された陶磁器は、明治政府が推進する殖産興業・輸出振興政策により多くが欧米を中心に輸出されました。東洋的なモチーフをあしらい、技巧を凝らした作品は、海外で高い評価を得てコレクションされたために、これまで日本で目にする機会が限られていました。本展で紹介するのは、当時輸出された陶磁器を積極的に収集し、里帰りさせている横山美術館の名品です。
 

3.意匠(デザイン)の魅力

 薔薇の枝が把手を形作り、それが器体にまで伸びて鳥が羽根を休めています(図3)。あるいは、葡萄と葡萄の葉の曲線を巧みに利用した花瓶(図4)。日本の陶磁器は、明治30年代(20世紀初頭)のアール・ヌーヴォー、アール・デコに代表される新しい意匠(デザイン)を取り入れ、魅力的な作品を次々生み出しました。


(図3)金盛花鳥図水差(オールドノリタケ) 22.0×18.4cm、明治24~44(1891~1911)年
 

(図4)諏訪蘇山(初代) 釉下彩透彫葡萄図花瓶 48.0×31.8cm、明治42(1909)年頃

出品作品の詳細は下記をご覧ください。
【出品目録】 2023年度 「横山美術館名品展 明治・大正の輸出陶磁器 技巧から意匠へ」(PDFファイル:666KB)
 

公益財団法人 横山美術館について

白亜の洋風な建物 横山美術館外観
 公益財団法人横山美術館は、株式会社プロトコーポレーション代表取締役会長・横山博一氏が収集した約3,000点におよぶ明治・大正期に制作された優れた陶磁器の里帰り品を後世に残し、世に広く伝えるため、2017年に名古屋市東区に開館しました。明治・大正期に日本から海外に輸出された陶磁器は、その卓越した技巧と斬新なデザインが注目され、近年、大きな脚光を浴びていますが、国内の現存数は限られています。日本では目にする機会の少なかった輸出陶磁器を里帰りさせるべく収集された横山美術館のコレクションは、近代日本における陶磁器の主要産地、代表的な窯屋、作家を網羅しており、近代陶磁史の研究に大きく資するものです。


公益財団法人 横山美術館 公式サイト(外部サイト)
 

関連事業

ギャラリートーク

日時 10月8日(日曜日)14時0分~15時0分
講師:原久仁子氏(横山美術館学芸員)
 
日時 10月21日(土曜日)、11月4日(土曜日)14時0分~14時40分
講師:当館学芸員
 
場所:展示室2
※申込不要・要観覧券