平塚市美術館基本方針

令和6年4月1日
 
 当館では、1991(平成3)年の開館に先立つ1986(昭和61)年に「平塚市美術館基本構想」で定められたメインテーマ「湘南の美術・光」に基づき、日本の近代から現代を主たる対象とする作品の収集・保存管理、広範なジャンルを視野に入れた企画展・特集展の開催、幅広い年代を対象とする教育普及事業の実施、市民の創作・表現活動を支える市民アートギャラリー・ミュージアムホール・アトリエの貸出、適時適切な施設管理、お客様サービスを第一にした運営業務等を実施する。加えて、各業務におけるコンプライアンス順守の徹底、来館者の安全管理に細心の注意を払うことで、市民に信頼され親しまれる美術館であるとともに、平塚市の文化を守り育てながら広く発信する場としての活動を積極的かつ継続的に展開する。
 
1 くらしに寄り添う  
  親しみやすいプログラムの提供とともにホスピタリティの向上を図り、年齢や性別、国籍・
  言語の違いや障害の有無にかかわらず、誰でもが美術を楽しむことができる多様性に配慮し
  た環境を整え、日常に溶け込む「くらしに寄り添う」美術館を目指し、多様な芸術文化に
  触れる機会をあらゆる層に広げることに寄与する。
 
2  地域とつながる  
  日本の近現代美術及び湘南地域の美術を積極的に紹介するとともに、市内各施設・団体等と
  の連携を図り、地域に根差した活動を展開する。また、市民が美術館事業に主体的に関わ
  り、美術を通じた市民相互の交流の機会を創出することで、芸術文化を守り育てる人材の
  育成を目指し、「地域とつながる」美術館として平塚市および湘南の文化的風土を国内外に
  広く発信する拠点となる。
 
3 地域への誇りを育む  
  綿密な調査研究に基づき、質の高い作品・資料の収集およびその公開、適切な作品保存管理
  の継続、優れた美術作品を紹介する企画展の開催、広範な年齢層に向けた教育普及事業を
  実施し、創造することの楽しさを伝えるとともに芸術文化への理解を深めるための機会を
  提供することを通して、美術館活動が「地域への誇りを育む」場となることを目指す。

平塚市美術館の歩み

 平塚は太平洋に面した相模湾沿岸の中央、首都東京の西南50kmに位置し、江戸時代には東海道の宿場町のひとつとしてさかえました。現在、市の総面積は67.88平方キロメートル、現在の人口は約26万人、温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、各産業が均衡をたもつ中核都市として、またリゾート地としても親しまれています。

 平塚を含む"湘南"と呼ばれる地域には、明治時代(19世紀末)から多くの芸術家が居住し、芸術運動を展開してきました。たとえば日本の近代美術や文学に大きな影響を与えた雑誌『白樺』は鎌倉において、また油彩画の新しいスタイルを追求した岸田劉生の草土社は鵠沼において、それぞれ活動が展開されました。その後現在に至るまで多くの作家が活躍しています。

 平塚市に美術館建設が発起されたのは戦後まもなくでした。中心となったのは空襲からの復興のなか、展覧会を自主的に開いていた地域の作家たちでした。1960年代初めには、彼らによる市への一作家一作品寄贈運動が始まり、学校、公民館や図書館の建設に続いて、1976年に平塚市博物館が開館すると、そこに美術部門が設置されました。その後、生涯学習と美術館建設の全国的な動きと同じく、平塚でも1984年に美術館建設研究委員会が発足して、開館へ向けての具体的な動きが始まり、1986年に平塚市美術館基本構想を、1986年に平塚市美術館建設基本計画を策定、その後建設工事と事業準備を開始し、1991年3月開館を迎えました。

 開館以来、湘南地域の中央に位置する美術館として、メインテーマを<湘南の美術・光>とし、よい環境で国内外の優れた美術を人々の鑑賞に供する事で文化に対する市民の理解を深め、創造や学びの意欲を刺激することを大きな目的として各種事業を実施してきました。

 今後も湘南地域の文化の成熟の一翼を担い、多くの方々に親しんでいただくため、美術館活動の充実に努めてまいります。
                                                                                平塚市美術館